フレスコの技法

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ブオン・フレスコ <buon fresco>

フレスコの代表的画法で、絵描きが一日に描き上げられる分だけの壁面を作り、その石灰が生乾きのうちに絵をかきあげ、毎日壁を塗りついで絵を描いていく技法です。
制作の手順を壁画ラボの作品『祥雲図』の制作にそって説明します。

「祥雲図」を描く前の吹き抜けの壁
手順1:描画準備
支持体の選択

まず、フレスコ画を何に描くかを決めます。支持体は吸水性のあるものでなくてはなりません。例えばレンガ、木、ブロック、石、陶板、石膏ラスボード、木毛板、セメントボード等です

『祥雲図』を描いた会館の吹き抜けホールの壁面には、吹き付けリシンが施されていました。その表面を削り取って樹脂系下塗り用石灰と砂を混ぜて地塗りをし、乾燥させてからその上にフレスコを描きました。


下図(カルトーネ/cartone)制作

フレスコは壁面への描画作業に入ってしまうと構図の変更などができないため、下絵の段階で完全に構想を練り上げる必要があります。

カルトーネとは実物大の下絵のことで、小さい下絵をデッサンしたら画面を実寸まで伸ばします。模写の場合は図版を拡大します。次にこの紙に描かれたアウトラインに沿って線香や、目打ち、くぎ等で穴をあけます。目打ちなどを使った場合は紙の裏に出たバリ(でっぱり)をサンドペーパーでこすって落としておきます。


ジョルナータ(giornata)の決定
ジョルナータとは壁が乾かないうちにできる仕事量を決ることです。 ジョルナータの線は絵の上方から順に、出来るだけゆるやかで、距離は短く、絵の流れを切らない所で決定します。このラインをあらかじめ下図に書いておきます。

壁塗り
手順2:マルタ(malta)作り

砂洗い
川砂を使う時はふるいにかけて大粒の砂を除き、泥分、塩分等の不純物を取り除く為水でよく洗います。硅砂や白竜などの砕石を使う場合は洗う必要はありません。砂の粒子は粒度を調整して使います。

マルタ(malta)作り
砂と消石灰を砂:石灰を1:1から2:1の割合で舟やボールなどに入れてよく練ります。

しっかり押さえつけるように。

手順3:地塗り(アリッチョ/arriccio)

下地には必ず水を与えてマルタがつきやすいようにします。支持体が壁で、凸凹がある場合それを平らにするように下塗りをします。

マルタの厚さは小さい作品なら4mm〜7mm位になるように、大きな壁であればその凸凹に合わせて塗ります。支持体が平らであったり、小品の場合は省略することができます。

その日に描く分だけ壁を塗り接ぐ

手順4:上塗り(イントナコ/intonaco)

そしてその日に描く絵の範囲(ジョルナータ)の分だけ、再びマルタを塗りつけます。
必ず画面の上方から壁を作ります。

筆で線を削り出す

手順5:下絵を写す けがき(インチジオーネ/incisione)

マルタを塗ってしばらくしたら、再び壁の上にカルトーネ(下図)を乗せ、カルトーネ(下図)の紙の上から先の尖ったものでひっかいて下絵を壁に写します。これを「けがき」と言います。
そしてそのあとけがいた線を頼りに筆で線描きをしていきます。

描画中

手順6:描画

本塗りの壁が締まってきたら顔料を水だけで溶いて、着色を始めます。

壁は時間が経つに連れて水の吸収が良くなります。描き始めはゆっくり、壁が水をどんどん吸収するようになってきたら、手早く仕事をし、1日分の壁を塗り継いだ分は必ずその日の内に描き終えます。

描き終えたらジョルナータの線に沿って、支持体につけたマルタを画面に対して、斜めにカットして不要な部分を切り落とします。

そして、この4〜6の手順を繰り返して完成に至ります。

完成作品例 → 【祥雲図】


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