フレスコ画の技法や歴史等を簡単にご紹介します。 ◇TOPICS◇ 1. フレスコとは?フレスコとは、砂と石灰を混ぜて作ったモルタルで壁を塗って、その上に水だけで溶いた顔料で、絵を描く方法です。 フレスコと他の絵画技法とで一番異なる所は、画面への絵具の定着を溶剤に頼らないということです。つまり、日本画の舊(にかわ)、油絵の油、水彩のノリ、といった溶剤をフレスコは一切必要としません。濡れた石灰の上に水溶きの顔料(粉末状の色素)を乗せてやれば、石灰水が顔料を覆い、空気中の二酸化炭素と反応して透明な結晶(カルサイト)になるのです。顔料はこの結晶に閉じ込められて美しさを保ち続けます。 そのためフレスコ画は、油絵や水彩画と全く違ったマチエール(画面の表情)を持っています。石灰がつくる結晶のなかに顔料の一粒一粒が閉じ込められるため、色が大変美しく、耐久性は抜群で非常に長期間(数千年)保たれます。 2. フレスコの歴史バチカン市国のシスティーナ礼拝堂にあるミケランジェロが描いた「天地創造」、「最後の審判」は、近年の修復でことに有名になりましたが、これもフレスコ画です。ローマ時代に作られたポンペイの遺跡もフレスコ画の代表のひとつです。イタリアの教会に見られる壁画の多くがフレスコ画です。 また、ユーラシア大陸を東へ辿ると、石窟の壁に土や石灰を塗り、絵を描いたものが、キジルや敦煌の仏教遺跡にも見られます。また朝鮮半島の墳墓に見られる技法は、日本の高松塚古墳まで伝わってきています。 フレスコ画の歴史的作品は世界中で見る事ができます。そして現在もそれらと同じ方法で制作することができるのです。 3. フレスコの技法フレスコという不思議な技法をマスターするには左官の技術も必要となりますが、生きた石灰と対話するのには魅力があります。石灰に定着していく顔料の美しさを含めて、一人でも多くの人にフレスコに接する機会を持ってほしいと思います。 ◇ブオン・フレスコ◇フレスコ画の代表的技法で、絵描きが一日に描き上げられる分だけの壁面を作り、その石灰が生乾きのうちに絵をかきあげ、毎日壁を塗り継いで絵を描いていく方法です。
◇ズグラフィート(グラフィート)◇イタリア語の引っかくという言葉からつけられた名前です。日本語で言うと「掻き落し」にあたります。2層以上の層のマルタを重ねて塗り、上の層を引っかき落として、絵をかいていく方法です。 外壁にも使われる方法で、
◇フレスコ・セッコ◇セッコとはイタリア語の「乾いた」という意味の言葉です。乾いた壁面(画面)の上に顔料に定着剤を混ぜて絵を描きます。ブオン・フレスコの場合、石灰の固まる力が、顔料の定着にも作用しますが、セッコの場合には石灰はすでに乾いていますので、その働きはしません。ですから顔料に定着剤を混ぜるのです。これはテンペラの技法や、油絵と同じやり方です。 |
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